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目が覚めると性別が変わっていました。神様、俺に何か怨みでもあるのですか?


 いったい、どれくらいの間自失していたのか。そんなことは、時計を見れば簡単にわかると言うかもしれない。
 とにかく、人間、信じがたい事態に直面すると固まるってのはよくわかった。
 セイバーが不審に思って俺を起こしにくるまで、呆けていたらしい。


「シロウ、どうしたのですか?貴女が寝坊など珍・・・・・・。起きているではないですか。一体どうしたのです、シロウ?」

 セイバーは俺の前にひざをつく。セイバーが言う事には、顔の前で手をひらひらさせたり、呼びかけたりしてくれたらしい。そんなことでは反応しない。なればと、俺の両肩をつかんで揺さぶった。これ以上はないというくらい。セイバー曰く往復びんたでもかまわなかったらしいが。どっちがましなのか・・・・・・。

「セ、セセ、セイバー、ももう、だだ、だ大丈らからとめて、てれてれれ」

 激しかったけれど。舌が回らなかったけど。セイバーはそれを聞いて揺さぶる事をやめてくれた。本当に、心から心配してくれていたのはわかるが、もうちょっとソフトにして欲しい。

「ふう、どうやら大事無いようですね。一体どうしたというのですか?」

 さすがに、俺の頭もクリアになってくる。だが、それは現実を直視すると言うことでもあったわけで。

「そ、そうだセイバー。聞いてくれ、俺のカラダが!」

「シロウ、落ち着いてください。私は逃げ出したりしませんし、ちゃんと聞きますから」

「だ、だけどこんな事になって落ち着いてなんか」

「こんなこと?」

「そうだよ。セイバー気づいてないのか? 俺のカラダ、お、おおおおお――――女になっちまって」

 恥ずかしさのあまり声が小さくなってしまう。

「ああ、そんなことですか」

「へ?」

 羞恥で真っ赤になっていた顔が急速に冷めていく。なんか嫌な予感がする。
 セイバーは、少し困ったような笑みを浮かべる。

「やっぱり、シロウはまだ寝ぼけているのですね」

 寝ぼけてる? じゃあ、この状況も夢ってことに

「シロウは最初から女性ではありませんか」

 俺の儚い希望はあっさりと砕け散った。それはもう粉々に。セイバーはいつも容赦ないのな、ほんとに。



 気を取り直して起き上がる。
 そんな俺を誰か褒めてくれないだろうか。普通は気絶、失神してバタンキューだ。

 えらくいつもと違う身体の感触に、意を決して自分の格好を睨みつける!
 なんというか・・・・・・、えらく可愛らしいというか、その、言葉に表しにくい寝間着だった。
 すぐに気付けと言いたくなるが、それはそれ、仕方ない事だと割り切る。
 なんていうか――――目線が違う気がする。こんな状態で身長(力)が伸びても、素直に喜べない。
 視線を下げれば目に入る、赤以上黒いやいや、ピンク? 未満のものは意識しない方向で。

 なんとか、セイバーを部屋から追い出し、自分の服が仕舞われている――――

「な、なんですと――」

 再びセイバーを招く事になってしまった。

「どうしたのですか、シロウ? 何かあったのですか?」

 先のことで慣れたのか。セイバーに慌てたような様子はない。
 慌てているのは俺のほうだ。足先から血液を巡るは、赤、銅、剣――――。
 回転は際限なく上り、身体を奔る二十七は悉く開ききる―――回る廻るマワル赤く剣がマワル
 全ては一瞬思考はそれを凌駕し翻る剣すら音速すら赤や刃金や黄金すら止まる留まるトマル全てはトマラズ
 やがてそれは全てに循環し、満たす充たすミタス頭頂までそれはマグマのように昇り登り上りのぼり・・・・・・

 真っ赤になった。瓦解した。やっぱ無理だった。

「はは、ははは」

「シ、シロウ?」

「やっぱり無理だったよ、セイバー。俺には無理だったんだ。確かに俺の身体は剣だけど、心は硝子だから」

「シロウ、一体何を、シロウ!?」

「セイバー、ごめん、後は、たの、む」

「シロウ!? 何を、シロウ? シロー!」

 そうして俺の、意外とデリケートだった精神は蓋をされた。
 いつまでも捨てきれぬ、これが夢だったらいいなぁ、なんて甘い考えを持ちながら。
 このときだけは安らかに・・・・・・。


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